今回は開業時(開業初年度)に消費税の申告をすることで還付を受けることができる手続きについてご紹介いたします。また消費税の概要についてはコチラの記事でご紹介していますので、こちらも参考になさってください。

消費税というのは、1年間(1月~12月)の売上合計が1,000万円を超えると、その年の翌々年から申告納税の義務が生じます。
言い換えると、初年度から売上合計が1,000万円を超えていたとしても、開業した年(1年目)と次の年(2年目)の分は消費税を納税しなくても良いということですね。

この消費税を納税しなくても良い期間のことを消費税法では「免税事業者」と規定しています。平たく読むと納税を免れる事業者ですね。このことを法律で定めているのです。
ところがこの免税事業者が認められている期間にあえて「課税事業者」(納税の義務がある事業者)を選ぶことができる手続きがあります。

その手続きとは【課税事業者選択届出書】を開業時に提出しておくだけで課税事業者を選択することができる仕組みです。

高額資産の取得により消費税の還付を受けることができる

開業1年目と2年目は納税しなくて良い(免税事業者の期間)のですから、消費税分が利益になっている(益税)と言えるのですが、開業するためには工事費や設計費、デザイン料その他もろもろ備品購入などで多くの消費税を事業主として支払っているのです。

例えば、開業のための工事費と設計費、家具や広告もろもろ含めて2,200万円(消費税200万円をふくむ)を支払ったとします。
秋口の10月に開業し、その年の売上が550万円くらいだったとすると、売上で受け取った消費税より、仕入れ代や家賃などの経費、それに開業のための工事費や設計費などで支払った消費税を合計すると、支払った消費税の方が多いため、還付請求することが可能です(もちろん合法です)。

簡単な事例を挙げてみましょう。

  • 開業時の工事費や設計費等の支払い 2200万円(消費税200万円)
  • その年の売上高550万円(消費税50万円)
  • その年の仕入れ等の支払額275万円(消費税25万円)

この場合、売上時に預かっている消費税は50万円。これに対して資産の取得や仕入れ時に支払った消費税の合計が225万円となり、この消費税の差額175万円を還付請求し受け取ることができるのです。

課税事業者選択届出書を提出することによるデメリット

新規に開業する場合、多くのケースで初年度に消費税の還付申告をすることができますが、利用されないケースが多いのです。
それは課税事業者を選択することによるデメリットもあるからです。

デメリットの一つ目、課税事業者を選択するとその届は3年間拘束されること。

初年度に消費税の還付を受け取ったとしても、次の2年間で納付する消費税額が初年度の還付額を上回るのであれば、それは免税事業者でいたままの方がトータルで節税できたと言えます。

デメリットの二つ目、簡易課税(消費税の仕入れ税額控除の計算が簡易な方法によることができる)を選択することができない。

簡易課税という方式を選択した場合、飲食店では売上で受け取った消費税の60%は仕入れや経費で支払ったとみなしてくれることになっています。
通常の課税方式(原則課税と言います)による計算よりも、納税額が少なくなるケースが有ります。

このように、高額資産を取得するためにいくら支払うか、また開業後どのくらいの売上が見込まれるかを、しっかり予測して選択する必要がありますので、その際は税理士さんに事前に相談を受けてください。